第一発見者は第一容疑者

あっちが何気なく見付けたその5つのバッグは、以前からそこにあったようだ。昨夜の雨でビショビショに濡れていて、カバンの中には蜘蛛の巣が張っているものもあった。
「ねぇコレって落とし物?」
少しドキドキしながら軽く中をあさる。財布やら何やらは全てチャックが開いていて、現金の類いは全て無くなっていた。封筒の宛名などから、ウオズミ夫妻のものだと分かった。
「…コレってさぁ、置き引きか車上荒らしじゃね?」
以前俺らがやった新歓車上荒らしの事件があってから、少しそういう窃盗系に異常にムカつく性格の俺は段々ムカっ腹が立ってきた。編み物のセットとか、ファイルに貼られたモリゾー&キッコロのシールとか、明らかに御老婦のものだ。あっちも「涙出そう…」と悲しんでいた。
「よし、交番に届けよう」
iMacを部屋に戻し、落とし物のバッグらをビニール袋につめていざ交番へ。
100均の交差点にある交番に着くも誰もいない。5分くらい待ってても誰も来ず、痺れを切らしたあっちが設置してあった電話機をかける。電話してしばらくしてパトカーに乗った新人っぽいリンゴほっぺの警官と、鷲鼻の劇渋警官が到着、状況を説明する。
「あの、コレうちのアパートん所に落ちてたんですけど…」
「こんなに沢山か!?」
「ウオズミさんって人のだと…」
「ウオズミ…?あ、コレ…」
慌ただしくなる警官達、そこへまたパトカーが到着し、「チョーさん」って感じの私服警官と、鳥肌実似のグラサン警官と、丸っこい人の良さそうな警官が到着。
しばらく警官達で小さな声で話してたり分厚いファイルを眺めたりした後に衝撃の一言が放たれた。
「コレねぇ、落とし物とか置き引きじゃないんだわ」
「…と言いますと…?」
「これねぇ、ウオズミさんちに入った泥棒が持ち出したものなんだわ」
マジっすか。
どうやら4月28日にウオズミさんちに泥棒が入って、その時に無くなったものとピタリ俺らが見付けたものが一致したと。
「じゃあ取り合えず…調書取りますわ」

調書!?って事は事情聴取!?

「はいコッチ来て」
並べられた机の端に鷲鼻警官と向かい合い取り調べを受けるボク。
「え〜っと…なんでこのバッグに目がいったの?」
知るか。
そんなプライマリーな所から始まり、「通る人は必ずコレに目がいくの?」とか「何でこのバッグを届けようと思ったの?」とかになり、とうとうドラマなどで耳にしまくるあの台詞、「昨夜は何してた?」も引き出す事に成功。しかも「ちょっと長くなると思うから、君帰っていいよ。」とあっちは帰宅させられる。いやぁボクって怪しまれやすいよね!多分この時俺の目、クロールしてたね。
しかしそこでチョーさんが「いやそこまで聞かなくてもイイよ」とワッシーを止めてくれたので良かったです。ワッシーは漢字が弱いらしく、「冷蔵庫」と「並べて」と「届ける」が思い出せず、電子辞書で調べてたんですが、「え〜っと…」って漢字思い出そうとしてる時に俺を『チラッ』て見てくるのが凄い気まずい。別に漢字書けないくらいで俺あなたを軽蔑とかしませんから!そうこうして完成した調書を読むワッシー、
「…〜午前0時より彼女のパソコンの調整をし、8時50分頃に〜…」
「あ、あのコ友達です」
「あぁ友達(笑)」
みたいな感じであっちをボクの彼女と思ってました。…そのままにしときゃ良かった。
そんな取り調べを受けてる横では鳥肌さんが赤ホッペ君に書類を書かせながら「あぁ〜ソコ違う!その下の欄だよ!」と注意して書き直させていました。丸さんはただ煙草を吸っていました。
その後色々な書類に多分5回位自分の住所を書き、そのたんびに拇印を押し、職業欄に泣く泣く「無職」と書き、ウオズミさんちの奥さんとお爺ちゃんと感動のご対面をし、交番に来てから約2時間、やっと解放!

取り合えず最後に丸サンから、
「もしかしたら、また御同行願うかもしれんで、そん時はヨロシクね」
って言われました。
まだ容疑者って事ネ!
う〜ん、ニンともカンとも!

        • -